会社を設立する際、最初に資本金をいくらにすればいいのか迷われる経営者の方も多いのではないでしょうか?
今回は会社設立の際の資本金の決め方について、税金面、経営面などの視点から大阪の税理士が解説します。
資本金とは!?
資本金とは株主が会社に出資した金額のことです。
初期費用が0円では事業を行うことが出来ませんので、会社設立の際、初めにいくらか出資を受けます。
他人に出資を受けることは稀で会社設立当初の場合、代表者個人や親族で出資することが大半です。
資本金を出資した人が株主になります。株主が会社の所有者です。
代表取締役も株主総会で解任等出来ます。
株式会社の場合、株主(出資者)と経営者(代表取締役など)は分離されていますので、株主と経営者が別でも構いません。もちろん株主と経営者が同じ人でも構いません。
現状、多くの中小・零細企業は代表者自らが株主兼代表取締役となり、会社を運営していることが多いです。
資本金の最高限度額、最低限度額
資本金の限度額は決まっていません。
以前は1,000万円以上でなければ株式会社を作ることは出来ませんでしたが、現在は1円から会社を作ることが出来ます。
1円で会社作っても良いですし、設立時から1億円で会社を作ることも出来ます。
資本金はいくらが適正であるか?
先ほど解説したとおり、資本金は1円でも会社を作ることが出来ます。
ただし、会社設立時は資本金が設備投資や会社の運転資金になりますので、あまりに少ない金額であれば、会社の事業活動を行うことが出来ません。
また、借入を行って事業活動を行うにしても、資本金が1つの信用力になることは間違いないので、極端に少ない額ですと融資が難しくなったり、新規の取引先などが敬遠する企業も出てくる可能性があります。
極端に低い資本金額は事業遂行上、弊害があるため、数万円以下など極端に少ない資本金額はおすすめ出来ません。
では、資本金の適正額はいくらかというと、会社設立時の資本金は少なくとも当面の運転資金を担保出来る額以上が適性と言えます。例え、設備費用は金融機関からの融資でまかなうとしても軌道にのるまでの数ヶ月程度の運転資金くらいはあった方が良いです。
よほど最初から大規模な事業でない限り、一般的には数百万程度を資本金として会社を設立される方が多いです。
資本金と消費税
会社設立後、消費税は基本的に2年間免税です。(例外もあるため、消費税の課税、免税について詳しくは「新設法人の消費税の納税義務及び消費税の還付を受けられる場合」をご参照下さい。
ただし、資本金が1,000万円以上であれば初年度から課税事業者となります。
よって、設立初期から大規模な事業を行わない限り、資本金は1,000万未満にしておいた方が消費税が免税になる分有利です。
資本金と地方税均等割
会社の税金は国に支払う法人税や消費税の他、都道府県や市町村に支払う地方税というものがあります。
この地方税のうち均等割と呼ばれる部分の税金があるのですが、これが資本金や従業員数によって決まります。
資本金が1,000円以下と1,000円超で税金が変わってきますし、1億を超えるとまた変わります。
この均等割は若干ですが、都道府県や市町村によって異なります。
ではどのくらい変わるのでしょうか?
次章で大阪府大阪市を例として、いくら変わるのか検証します。
大阪で会社設立する場合の地方税均等割
大阪府の資本金
法人等の区分 | 均等割(年額) |
資本金等の額が1千万円以下である法人など
|
20,000円 |
資本金等の額が1千万円を超え1億円以下の法人 | 75,000円 |
資本金等の額が1億円を超え10億円以下の法人 | 260,000円 |
資本金等の額が10億円を超え50億円以下の法人 | 1,080,000円 |
資本金等の額が50億円を超える法人 | 1,600,000円 |
大阪市の資本金
法人の区分 | 従業者の数の合計数 | 税率(年額) |
資本金等の額が1,000万円以下の法人 | 50人以下 | 50,000円 |
50人超 | 120,000円 | |
資本金等の額が1,000万円を超え1億円以下である法人 | 50人以下 | 130,000円 |
50人超 | 150,000円 | |
資本金等の額が1億円を超え10億円以下である法人 | 50人以下 | 160,000円 |
50人超 | 400,000円 | |
資本金等の額が10億円を超え50億円以下である法人 | 50人以下 | 410,000円 |
50人超 | 1,750,000円 | |
資本金等の額が50億円を超える法人 | 50人以下 | 410,000円 |
50人超 | 3,000,000円 |
このように会社設立に資本金の額によって、地方税の税金が変わってきます。
1,000円以下であれば大阪府20,000円、大阪市50,000円の計70,000円ですが、1,000円超1億円以下であれば、大阪府75,000円 大阪市130,000円の計205,000円となり、135,000円高くなります。
この地方税均等割は赤字でも発生する税金であるため、会社設立初期の頃は負担が大きいと思います。
これらも踏まえて資本金の額を決定すると良いでしょう。
資本金と法人税率や税法上の特典
資本金が1億円を超えた場合は税法上、大企業となります。
逆に資本金が1億円以下の場合は税法上、中小企業となり、軽減税率を受けることが出来たり、交際費、少額減価償却資産など、税法上の特典たくさん受けることが出来ます。
単に軽減税率だけでも中小企業は法人税額が所得800万円以下の分は15%になり有利です。ちなみに大企業は23.2%です。
この他資本金が3,000万円以下も中小企業投資促進税制などの特典があります。
よって、会社設立時の資本金額は税制面で1億円以下が有利であり3,000万円以下はさらに有利です。
税金を考慮した場合の資本金の適正額
上記で解説したように、資本金は消費税、地方税均等割、法人税率や税法上の優遇措置で影響があります。
消費税は1,000万円以上は初年度から課税事業者になりますし、地方税均等割は1,000万円を境に上がってしまいます。
法人税率は1億を境に変わってきますし、3,000万円でも一定の税法上の差があります。
よって、税金面のみを考慮すると特段の事業がない限り1,000万円未満の資本金で会社設立する方が税負担は大幅に低減されますので1,000万円未満が良いと言えます。
初年度から多額の融資の必要がない事業であればやはり、数百万を資本金にするのがベターです。
ただ、会社設立時からある程度の資金が必要な事業である場合に会社設立時の税負担を軽減させる方法はないのでしょうか?
実は出資額の一部を資本準備金するという方法がありますので次章で解説します。
税金は押さえたいが最初の出資額が1,000円を超えるときは資本準備金にすべし
資本準備金とは株主から払い込まれた金額のうち、資本金に組み入れなかった金額の累積を指します。なお、資本準備金は資本金の1/2を超えない額を限度とします。
少し難しいので、具体例で確認します。
会社設立時、ある程度の資金が必要な事業のため、1,500万円の出資をし、会社を設立したとします。通常であれば1,500万円は資本金になります。
ただ、会計上750万円までは資本準備金とすることが出来ます。
この場合、出資金が1,500万円なので、会社設立時の現預金が1,500万円となり、内訳は資本金750万円、資本準備金750万円となります。
単純に会計処理を一部資本準備金とするだけで資本金を減らすことが出来ます。
均等割は資本金等の額が基準になりますが、消費税は資本金が基準となるので、上記の例でも免税事業者になります。
会社設立時の資本金について まとめ
今回は会社設立時の資本金について解説しました。
資本金額は特段の事情がない限り1,000万円未満が税法上で有利です。
ただし、あまりに少ない資本金額は信用力の低下につながりますので融資や
新規の取引に影響がある場合もあります。
会社設立時の資本金については税理士等の専門家に相談してから決定するのが良いでしょう。
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