企業型DC(企業型確定拠出年金)の節税効果とは?

企業型DC(企業型確定拠出年金)とは?

企業型DC(企業型確定拠出年金)とは、企業が掛金を拠出し、従業員が自ら年金資産の運用を行う制度です。
IDECOと制度としては同じです。IDECOは個人が掛金を拠出し、自分で運用しますが
企業型DC(企業型確定拠出年金)は企業が掛金を拠出し自分で運用します。
要は掛金を企業が負担するのか自分で負担するのかが違います。
企業型DC(企業型確定拠出年金)、国が行っているものですので、税金の優遇措置が大きく、資産形成上、非常に有利な制度と言えます。
加入要件の他、会社側のメリット、デメリット及び個人側のメリット、デメリットについても解説していきます。

加入要件

企業型DC(企業型確定拠出年金)の実施企業に勤務する従業員が対象です。

掛金額

上限 5万5,000円
ただし、厚生年金基金などの他の企業年金がある場合は27,500円となります。

マッチング拠出制度

企業の掛金の上限は上記の通りですが、企業型DC(企業型確定拠出年金)にはマッチング拠出制度というものがあります。
これはどのような制度かというと、企業が拠出する額にプラスして従業員も自分の財布から拠出するという制度です。
これは例えば、企業が月10,000円拠出するが、従業員がもっと拠出したいので自分でも10,000円を拠出し、毎月20,000円運用するといったものです。
なお、マッチング拠出制度は下記の要件があります。
●従業員が拠出する掛金の金額が、企業が拠出する掛金の金額を超えないこと
●企業が拠出する掛金と、従業員が拠出する掛金の合計額が、掛金の拠出限度額を超えないこと

なお、マッチング拠出したいと思っても、企業がマッチング拠出の制度を採用していない場合もあります。

企業型DC(企業型確定拠出年金)の企業(会社)側のメリット

福利厚生が充実し、社員の定着に繋がる

企業型DC(企業型確定拠出年金)は掛金を会社が負担するため、社員の負担はありません。
よって、モチベーションアップや離職防止に一定の効果が期待できます。

掛金は全て経費となる

掛金は全て損金(経費)扱いです。

社会保険料が削減できる

掛金は給与扱いとはならないため、その掛金分、社会保険料の等級が下がり、社会保険料の会社負担分だけ会社の経費が浮くと考えることができます。

全社員の加入義務がない

企業型DC(企業型確定拠出年金)は全社員の加入義務がなく、加入時期や掛金も比較的自由に設定することができます。

役員も加入できる

企業型DC(企業型確定拠出年金)は福利厚生という側面が強いですが、役員も加入出来ます。代表取締役であっても同様に加入できるので、役員の老後の資産形成にも使えます。

企業型DC(企業型確定拠出年金)の企業(会社)側のデメリット

導入及び運用のコストがかかる

企業型DC(企業型確定拠出年金)の一番のデメリットは導入費用、運用費用でしょう。
申込む金融機関により、費用は違いますが、比較的安価な金融機関であっても
導入費用 10万円~
運用費用 月数千円 + 1人当たり管理費月数百円
かかります。

よって、社長一人の会社や数名の会社であれば費用がかさみ、導入するメリットは薄れます。
逆に、数十名以上の会社であれば一人当たりの費用は数百円程度まで下がるので、導入、運用費用のデメリットは下がります。

導入及び運用手続きがやや煩雑

企業型DC(企業型確定拠出年金)はイデコなどのように申し込めば直ぐに開始される訳ではありません。
労使間の合意、制度設計、勉強会、就業規則の見直しなど、運用開始までに4ヶ月~8ヶ月程度かかることが一般的です。
特に導入までの手続きが煩雑で、導入後はそこまで負担はありませんが、それでも入社、退社で一定の事務処理が必要です。
導入及び運用手続きを代行会社などに委託することも出来ますが、委託料がかかってしまいます。
このように、手続き面が煩雑なのも特徴で、国の思惑とは裏腹に特に中小企業では導入が進んでいません。

社員の投資教育が必要になる

企業型確定拠出年金では、社員に投資教育及び情報教育をすることが会社の法律上の義務として規定されています。
よって投資教育は、制度を実施する会社の責任となっているため、その分工数が必要となってきます。

企業型DC(企業型確定拠出年金)の社員側のメリット

運用益が課税されない

特に全て株式で数十年運用している場合は、運用益が数百万、数千万円ということも珍しくないと思いますが、運用益は全て非課税です。

社会保険料、所得税、住民税が軽減される

企業が拠出した額は個人の給与に含まれないので、結果として社会保険料や所得税、住民税が軽減されます。
例えば、月5万円を企業が拠出するとします。これは将来、社員が受け取れるものなので実質的に社員の給与です。給与月30万の場合、本来企業が拠出した5万を加えた35万円の給与から各種天引きされるはずです。
ですが、企業が拠出した金額は給与に含まないこととされるので、社会保険料や所得税、住民税は35万円に対してかかるのではなく、30万円に対しかかります。
このことからわかるように、実質的に社会保険料、所得税、住民税などの税金が軽減されています。

年金受取時の税金が非常に安い

企業型確定拠出年金は受取時も税金が安い、またはほとんどかからないようになっています。
企業型確定拠出年金は運用が終わり、60歳以降に受け取りますが、一括で退職金として受け取るか分割で年金として数十年にわたり受け取るか(又はその併用)選ぶことが出来ます。
掛金で税金が安くなった訳だから、受け取るときに税金がかかってしまうのが通常の考え方ですが、企業型確定拠出年金の場合、一括、分割どちらにしろ税金が非常に安く又は無税で受け取ることが出来ます。

具体的な計算方法は下記のようになります。

一括の場合

勤続年数 退職所得控除額
20年以下 40万円×勤続年数
20年超 800万円+70万円×(勤続年数-20年)

 

具体例として30年掛け続けた場合
800万+700万=1,500万の控除があるので受取額が1,500万円以下であれば税金はかかりません。

分割の場合

分割の場合受け取る年齢が60歳~64歳の場合と65歳以上の場合で異なってきます。
公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下の場合は下記のとおりです。

公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が1,000万円以下
年金受取人の年齢 (a)公的年金等の収入金額の合計額 (b)割合 (c)控除額
 

 

 

65歳未満

公的年金等の合計額が600,000円までの場合は所得金額はゼロ
600,001円から1,299,999円まで 100% 600,000円
1,300,000円から4,099,999円まで 75% 275,000円
4,100,000円から7,699,999円まで 85% 685,000円
7,700,000円から9,999,999円まで 95% 1,455,000円
10,000,000円以上 100% 1,955,000円
 

 

 

65歳以上

公的年金等の合計額が1,100,000円までの場合は所得金額はゼロ
1,100,001円から3,299,999円まで 100% 1,100,000円
3,300,000円から4,099,999円まで 75% 275,000円
4,100,000円から7,699,999円まで 85% 685,000円
7,700,000円から9,999,999円まで 95% 1,455,000円
10,000,000円以上 100% 1,955,000円

 

会社を退職しても掛け捨てにならない

会社を退職しても持ち運ぶことが出来ます。
転職先に企業型DC(企業型確定拠出年金)があればそのまま持ち運び、運用出来ます。
転職先に企業型DC(企業型確定拠出年金)になければ、イデコに今までの分の運用分を持ち運び運用できます。転職ではなく、自営業者や無職になる場合も同様にイデコに持ち運ぶことができます。
よって、退職したからといって不利益になることはありません。

企業型DC(企業型確定拠出年金)の個人側のデメリット

原則60歳になるまで引出し出来ない。

こちらもIDECOと同様に原則として60歳未満は引出し出来ません。例外的に国民年金の免除者で資産額が25万円以下などであれば60歳未満でも受け取ることが出来ますが、その際は税の優遇措置は受け取れません。よって、基本は受取りは60歳以降となります。

個人で運営管理機関を選ぶことが出来ない

運営管理機関、いわゆる証券会社や銀行などは会社が選びます。
よって、○○証券で発売している××という投資信託に全額運用したいと思っても、会社が△△証券を運用管理機関にしていれば、その投資信託で運用することは出来ません。
一般的でありメジャーも投資信託などであればどの運用管理機関でも似たような商品がありますが、非常にマニアックな商品を選びたい投資上級者などはデメリットに感じることもあるでしょう。

基本的に会社が掛金を拠出するので個人のデメリットは少ないですが、あくまでも年金制度なので60歳まで引出しすることができないということは覚えておいた方がいいでしょう。

企業型DC(企業型確定拠出年金)まとめ

今回は企業型DC(企業型確定拠出年金)の解説をしました。
企業型DC(企業型確定拠出年金)は、いわばIDECO(イデコ)の会社が費用負担をするバージョンですね。
イデコについては詳しく「個人型確定拠出年金(iDeCoイデコ)の節税効果について」で解説していますのでご覧下さい。
企業型DC(企業型確定拠出年金)はイデコと同様、非常に節税効果が高いです。
会社経営者は今回のメリット、デメリットを参考に福利厚生の一貫として検討されるもの良いと思います。
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