今回は印紙税の発生する文書と印紙税の節税方法について大阪の税理士が解説します。
印紙税をよく理解していない中小・零細企業の社長、個人事業主の方なども多いのではないでしょうか?
印紙税は複雑ではなく、要点さえ押さえれば、専門家ではなくても比較的理解しやすいです。今回の記事の内容だけでも覚えると印紙について迷いませんし、節税にも繋がりますので、是非ご一読下さい。
印紙税とは!?
印紙税とは、契約書や領収書などの文書作成した場合において、印紙税法に基づきその文書に対して徴収、課税される税金のことです。
印紙税が課税される文書とは
印紙税が課されるのは印紙税法で定められた課税文書に限られています。
印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書です。
限定列挙なので、この20種類に該当しない文書には課税されません。
印紙税が課される20種類の文書
印紙税が課される文書は20種類ですが、通常の業種の中で関わってくるのは主に下記の4つです。
主要な4つの課税文書
第1号文書
第1号文書は、不動産、運送、借用証書の契約書関係です。
不動産販売契約書、土地賃貸借契約書、運送業務契約書、金銭消費貸借契約書などが該当します。
1万円未満は非課税ですが金額に記載にないものは200円がかかります。
なお、第1号文書と第3号文書から第17号文書とに該当する文書で第1号文書に所属が決定されるものは、記載された契約金額が1万円未満であっても非課税文書となりません。
第2号文書
請負に関する契約書です。
工事請負契約書、外注契約書、物品注文請書などが該当します。
こちらも1万円未満は非課税ですが金額に記載にないものは200円が課税されます。
後述しますが、この第2号文書と第7号文書の所在の決定がしばしば問題となります。
第7号文書
継続的取引の基本となる契約書
取引が継続する外注や請負などが該当します。
よって第2号文書に該当する多くの場合がこの第7号文書にも該当します。どちらの所属になるかがしばしば問題となります。
契約期間が3か月以内で、かつ、更新の定めのないものは除きます。
なお、第7号文書に該当する場合の税額は一律4千円です。
第17号文書
1 売上代金に係る金銭又は有価証券の受取書
よく関係するのは飲食店の領収書などが挙げられます。
なお、この第17号文書は5万円未満は非課税であるため、少額の飲食の領収書などは非課税です。
その他にも売上関係の受取書は5万円以上100万円以下であっても200円発生しますので現金での領収書を発行する場合は印紙が必要か確認しましょう。
2 売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書
一律200円
その他の課税文書
関係する機会は少ないとは思いますが、残りの16の課税文書は下記の通りです。
第3号文書
約束手形または為替手形
第4号文書
出資証券
第5号文書
合併契約書又は吸収分割契約書若しくは新設分割計画書
第6号文書
定款
第8号文書
預金証書
第9号文書
船荷証券など
第10号文書
保険証券
第11号文書
信用状
第12号文書
信託行為に関する契約書
第13号文書
債務の保証に関する契約書
第14号文書
金銭又は有価証券の寄託に関する契約書
第15号文書
債権譲渡又は債務引受けに関する契約書
第16号文書
配当金領収証、配当金振込通知書
第18号文書
預金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳
第19号文書
消費貸借通帳、請負通帳、有価証券の預り通帳、金銭の受取通帳などの通帳
第20号文書
判取帳
その他、印紙税額など詳しく調べられたい方は国税庁のホームページ「印紙税額」をご参照ください。
何号文書のに該当するか!?
何号文書に該当するか判断に迷うのは圧倒的に第7号文書との兼ね合いです。
第1号文書の運送業務契約などは継続し続けることも多いですし、第2号文書においては、
基本的に業務委託契約や請負契約は完了までに3ヶ月を超えるケースやどちらかが解約しない限り継続し続ける自動更新の場合が多くほとんどの場合第7号文書とどちらにも該当します。
どちらの所属になるかで印紙税額が変わってしまいます。
例えば、100万円以下の業務委託契約ですと、第2号文書に該当した場合は200円ですが、第7号文書に該当すると4,000円になってしまいます。
結構な金額差です。ではどのような場合には第2号文書に該当し、どのような場合には第7号文書に該当するかを説明します。
まず通則3に「第1号又は第2号に掲げる文書で契約金額のないものと第7号に掲げる文書とに該当する文書は、同号(第7号文書)に掲げる文書とする。」との規定があります。
よって、「契約金額の記載のある」ものは第2号文書、記載のないものは第7号文書に該当することになります。
ここで、契約金額に記載があるとはどういう場合も指すのでしょうか?
ズバリ、「契約金額の記載のある」とは総金額が明示されている又は金額が算定出来るものです。
具体例を交えて解説します。
契約金額の記載がある具体例
契約金額の記載がある具体例1
第〇条 この工事の請負金額 100万円
この場合は総金額が明示されているので「契約金額の記載のある」とわかります。
契約金額の記載がある具体例2
第〇条 この業務は月額2万円
第〇条 契約期間は令和〇年1月から1年間。ただし、契約満了〇ヶ月前に双方から解約の申し出がない場合はさらに1年間延長するものし、以後も同様とする。
この場合 2万×12ヶ月=24万円と金額が算定出来るので「契約金額の記載がある」とされ第2号文書に該当することとなります。
反対に下記のような例は「契約金額の記載がない」とされます。
契約金額の記載がない具体例1
この業務は1作業につき1,000円とする。
この場合、何作業するのかが契約書上で明記されておらず、単に単価だけを定めたものになるため、「契約金額の記載がない」とみなされ、第7号文書に該当することになります。
契約金額の記載がない具体例2
第〇条 この業務は月額2万円
~契約書の契約期間の条項がない~
この場合、契約期間が契約書に盛り込まれておらず、金額を算定できないため、「契約金額の記載がない」とみなし、第7号文書に該当することになります。
印紙税が課税されない文書や節税方法
さて、ここからは印紙税が課税されそうで課税されない文書や印紙税の節税方法について解説します。
印紙税が課税されない委任契約書
さて、印紙税が発生するのは、印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書のみです。
請負契約は第2号文書に該当し印紙税が発生しますが、委任契約は20種類に記載がないため印紙税が発生しません。
では、請負と委任の違いは何かと申しますと、簡単に言えば、成果物を求められるのは請負契約、業務の遂行を目的とするものが委任契約と覚えておくと良いです。
例えば、工事であれば、不動産が完成するという成果物に対し金額が発生します。
これに対し、コンサル料や顧問料などは、成果物に関係なく、業務の遂行を目的に発生する費用です。
ここに課税されるかされないかの大きな違いがあります。
委任契約であるか請負契約であるのかは印紙税の世界では重要です。
もちろん、タイトルを委任契約にすると印紙税が課税されないわけではなく、あくまで成果物が目的か業務の遂行が目的かいうことで課税されるか否かが決まりますので、契約書の内容がどちらになっているか、また実態に即して記載されているか確認しましょう。
印紙税の究極の節税方法
さて、印紙税は印紙税法に定められた課税文書により課税されます。
書類が交付されない電子メールや電子領収書などには基本的には課税されません。
したがって、全て電子化してしまえば、基本的には印紙税はかからなくなります。
印紙税の究極の節税方法は全て電子化することであると言えます。
もちろん、契約書や領収書は相手があることで、取引先が電子に慣れていない場合や紙でのやり取りのみしか受け付けない企業であれば電子化は難しいかもしれませんが、あくまで印紙税は紙ベースの印紙税法に定められた課税文書により課税されるということを覚えておきましょう。
まとめ
今回は印紙税について大阪の税理士が解説しました。
印紙税が発生する課税文書は20種類のみ、委任契約や電子メールや電子領収書は印紙税がいらない、2つの号にまたがる時は契約金額の記載があるか否かで決定するなど、ポイントをつかめば、専門知識がなくても印紙税は理解しやすいはずです。
覚えていきましょう。
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