出張旅費規程で会社と個人ダブル節税!

今回は出張旅費に関して専門家の立場から解説します。
出張旅費規定の節税は一般的な節税の方法の中で、とても使い勝手のよい素晴らしい方法の一つです。
今回の内容は是非、会社の代表者や経理関係の方は理解して頂きたい内容になります。
出張に行って節税!?、旅費が節税!?と思われる方も多いかとは思いますが、具体的に出張旅費規定とは何なのか、なぜ節税になるのか、具体的に妥当な金額まで税理士が解説します。

出張旅費規定とは?

まず始めに、出張旅費規定とは何なのかをご説明します。
出張旅費とは読んで字のごとく、出張に行った日当や宿泊したビジネスホテルなどの宿泊費、出張先での交通費などが該当します。
この出張旅費を、例えば出張の日当として、従業員Aさんには五千円、従業員Bさんには三千円を渡していたとすればどうでしょうか?
会社的にも従業員から信頼を失いますが、税務的にも特に理由もなく従業員によって金額の差をつけるという行為は、経費として認めるのは厳しくなってきます。
そこで、社内で出張旅費のルールを決め、書面に残します。
これを出張旅費規定と言います。
出張旅費としていくら支給するかということは、基本的に会社の自由なため、出張旅費規定は社会通念上適正な範囲であれば、会社の判断に委ねられます。
先ほどの例のように、従業員Aさん五千円、従業員Bさん三千円など理由なしに差をつけることは、税務上は認められませんが、役職、職制などによる差はつけていれば税務上も認められます。
例えば、Aさんが部長でBさんが平社員だった場合、出張旅費規定に部長五千円、役職なし従業員三千円支給すると記載してあれば、経費として認められるでしょう。

出張旅費規定はなぜ節税効果があるのか?

さて、この出張旅費規定を作成するだけでなぜ節税効果があるのでしょうか?
それは出張旅費が所得税法上、非課税であり、消費税法上は仕入れ税額控除の対象になるからです。
専門用語で少し難しいので、給与として支給した場合と、出張旅費規定で支給した場合の具体例を使って解説します。

出張旅費規定を作らずに2万円を「営業手当」として支給した場合

会社側:給与として経費となるが、給与に消費税がかからないので仕入税額控除の対象とならない
役員、従業員側:給与として所得税、住民税が課税される

出張旅費規定を作成し、出張旅費2万円を規定通りに支給した場合

会社側:出張旅費として経費となり、消費税の控除の対象にもなる
役員、従業員側:全て非課税で受け取れる

すなわち、出張旅費規定で支払えば、会社側は支払った消費税として2万円の消費税分1,481円消費税が安くなり、役員、従業員側は、2万円に係る所得税、住民税(所得により税率が異なる、15%~55%)が安くなります。
同じ、支払いであるのも関わらず、規定を作成しているか否かで税金に違いが出ます。
さらに、会社側では、規定を作成せず、適当に出張費用を支払っていると経費として認められない可能性さえあります。
節税という側面と会社の信頼を上げるという2つの側面から出張旅費規定は作成しておいた方が良いでしょう。
一回の出張では、そこまで大きな効果は得られませんが、1年を通すと大きな節税効果になることがあります。
例えば、私の知り合いのコンサルタントの方は年間100回程度出張で遠方に行くそうです。
出張旅費が1回2万円だとしても、年間で200万円です。節税効果は数十万になるでしょう。
このように、取引先が遠方であったり、講演などで出張が多い会社などは大きな節税が期待できますので、出張旅費規定はぜひ作成しておきましょう。

どのような規定にすれば良いのか?

出張旅費規定の効果は何となくわかっても、規定自体をどのように作成すれば良いか、どのような項目を入れれば良いかわからないと思いますので、ここで規定を作成する際のポイントを解説します。

対象者は全員にして、役職により金額に差をつける

例えば、社長のみに出張旅費を支払う規定や社長の親族のみに支払う規定などは、税務署は経費として認められないでしょう。
代表取締役 ○○円
取締役   ○○円
部長    ○○円
課長    ○○円

という風に役職により分けるのが合理的です。
社長一名の会社でも、今後、分けた方が税務署から否認される可能性は減りますし、今後従業員を雇うことも視野に入れた場合、分けた方が無難です。

宿泊費、出張日当など項目によって分けて記載する方がお得

出張旅費 一律 ○○円とするより
宿泊費 一泊 ○○円
出張手当 一日当たり ○○円

という風に詳細を分ける方が実は得です。
なぜなら、例えば宿泊費一泊一万円という規定にし、役員や従業員が五千円のビジネスホテルに泊まったとしても、一万円分非課税で受取ることができるからです。
出張旅費 一律 ○○円と記載しても、もちろん節税効果はありますが、詳細に記載した方が上記の理由で税金がお得と言えます。

どのくらいの距離から出張か決める

出張には大阪府から兵庫県や奈良県にいくことも出張と呼べるかも知れませんが、さすがに近距離の取引先に訪問すること全てを出張とするならば、会社からのキャッシュアウトも多額になりますし、経費として認められないでしょう。
一般的には距離で決めることが多いです。
会社から100km以上離れ場所に、業務の為に訪問すれば支給するなど記載しておくと良いでしょう。

日帰り、宿泊を個別に記載する

日帰り一日○○円、宿泊一日当たり○○円と個別に記載する方が良いでしょう。
節税のためというよりも、役員、従業員の負担を考えれば、宿泊を伴う出張は高くする方が一般的です。
会社によっては、日帰りは支給しない、宿泊を伴う出張のみ支給という規定にしても良いでしょう。

これらの記載したポイントを必ず入れなければならないわけではありませんが、作成する際の参考にして下さい。

出張旅費の金額はいくらに設定するのが良いのか?

さて、出張旅費規定で一番悩む箇所は、金額をいくらに設定すれば妥当かということだと思います。
あくまで社内規定ですので、原則は自由ですが、あまりにも高額な出張旅費規定は経費として認められません。
金額はいくらくらいが妥当ということは、会社の規模や業種、頻度により異なるので一概には言えませんが、中小企業を前提として、税理士の経験から記載します。

日当手当
社長 日帰り5,000円 宿泊10,000円前後
取締役 日帰り3,000~5,000円程度 宿泊5,000円~8,000円程度
平従業員 日帰り3,000円以下程度 宿泊2,000円~5,000円程度

宿泊料
社長 15,000円前後
取締役 10,000円~13,000円程度
平従業員 10,000円以下程度

これくらいの金額が多いと思います。参考にして下さい。
一人社長や親族のみの会社の場合、課税庁も厳しく見てきますので、日当は、宿泊を伴う出張でも高くても1万円以下くらいにしておいた方が無難と言えます。

まとめ

今回は出張旅費規定について解説しました。
旅費規定は出張の多い会社のみならず、出張手当を支給する会社は既定を作成した方が良いでしょう。
宿泊料は会社によっては実費精算で、日当手当だけの会社もあるでしょうが、日当手当だけでも支給するならば必ず規定を作成しましょう。
金額は一人社長や親族のみの会社は厳しくチェックされますので、同規模の会社の平均程度に留めておくのが無難と言えます。