会社を設立すれば必要となる1年間の税金

今回は会社を設立すれば必要となる1年間の税金について解説します。
会社を設立した場合、売上や仕入れのコストについてはなんとなく予測できるものの税金に関しては全くわからないという方も多いと思います。1年間のトータルの税金のランニングコストをあらかじめ把握しておくことで、資金繰りの計画も立てやすいかと思います。
今回は法人にかかる税金の全てを記載しており、税率等もなるべく網羅したため、内容的には少し難しいかも知れません。流し読みでも構いませんし、まとめだけでも十分ためになると思いますので、税額の概算だけでも理解して頂ければ十分です。

法人税

法人税は、法人所得を課税標準として法人に課される税金です。
法人税は所得(≒利益)に対して課税されます。
従って、赤字などで所得が0円又は赤字の時は税金が発生しません。
税率は「中小企業者等」は軽減税率が適用されるため2段階の税率となります。
中小企業者等とは資本金の額等が1億円以下の法人又は資本金の額等が5億円以上の大法人と完全支配関係にない法人であるため、新設法人や小規模法人は99.9%、ほぼ全ての会社が当てはまり、軽減税率が適用されます。
よって、新設法人や中小・零細企業の税率は場合は下記の通りとなります。

○ 所得800万円以下…15%
○ 所得800万円超…23.4%(平成30年4月1日以降開始事業年度からは23.2%)

具体的には、例えば所得1,000万円の場合であれば、800万×15%+200万×23.4%=1,668,000円の法人税になります。

地方法人税

地方法人税は都道府県に納める税金のような名称ですが、国税です。簡単に言えば、国が税金を徴収し地方に分配する税金です。
地方法人税の税率は法人税の4.4%です。
例えば、所得1,000万円で法人税が1,668,000円であれば、地方法人税は1,668,000×4.4%=73,300円(100円未満切捨)となります。

消費税

消費税は、消費に対してかかる税金ですが、新設法人は最初の2年間は免税であることが多いです。
詳しくは「新設法人の消費税の納税義務及び消費税の還付を受けられる場合」をご確認下さい。
原則的には消費税は預かった消費税-支払った消費税で計算されます。
例えば、課税売上1,080万(税込) 課税仕入れ756万(税込)の場合、消費税は
80万-56万=24万円となります。
この他に簡易課税制度という概算により計算する方法もあります。簡易課税は課税売上から業種によるみなし仕入率をかけて計算する方法です。
要件はありますが、原則的な計算方法の本則課税と概算による計算の簡易課税を選択することができます。
どちらが有利かは税理士と相談して決定するのが良いでしょう。

道府県民税

道府県民税は都道府県内にある事務所又は事業所に課される税金です。
道府県民税には「法人割」と「均等割」の2種類あります。
法人割は所得に課税され、均等割は均一で課税されます。つまり均等割は赤字であっても課税されます。
税率は都道府県によって異なります。(税率にあまり大きな差はありませんが)
大阪府の場合の道府県民税を例に税率等についてご説明いたします。

法人割

① 資本金の額又は出資金の額が1億円超又は法人税額が年2,000円超の場合…4.2%

② 資本金の額又は出資金の額が1億円以下かつ法人税額が年2,000円以下の場合…3.2%

都道府県民税の法人割も法人税と同じく、会社設立時のほぼ全ての会社は②の低い税率が適用されます。

均等割(大阪府の場合)

均等割についても都道府県により金額が異なります。均等割は税率ではなく均一の金額になります。

大阪府の場合
① 資本金等の額1,000万円以下…20,000円
② 資本金等の額1,000万円超1億円以下…75,000円
③ 資本金等の額1億円超10億円以下…260,000円
④ 資本金等の額10億円超50億円以下…1,080,000円
⑤ 資本金等の額50億円超…1,600,000円

新設法人や小規模法人のほとんどが①か②に該当します。

法人事業税及び地方法人特別税

法人事業税は法人の行う事業について課される税金で、地方法人特別税は法人事業税に付随する地方への再配分のための税金です。
法人事業税は、不均一課税適用法人や軽減税率適用の有無があり非常に税率がややこしいので、多くの中小・零細法人が該当する大阪の場合の具体例で説明します。

資本金1億以下、所得5000万以下で大阪に本店、支店合わせて3つ以下の法人の場合

法人事業税
年間400万円以下の所得…3.4%
年間400万円超800万円以下…5.1%
年間800万円超…6.7%

地方法人特別税
法人所得割額の43.2%

所得500万円の法人では400万×3.4%+100万×5.1%=187,000円
187,000×43.2%=80,700円(100円未満切捨)
この場合、法人事業税及び地方法人特別税は187,000+80,700=267,700円になります。

法人市町村民税

法人市町村民税は法人住民税とも呼ばれ、該当の自治体に住所または事業所を置く法人に課せられる税金です。道府県民税と同様「法人割」と「均等割」の2種類あります。
法人市町村民税も市町村によって法人割の税率や均等割の額が違います。
具体的に大阪市の場合でご説明します

法人割

① 資本金の額または出資金の額が1億円超の場合…11.9%

② 資本金の額または出資金の額が1億円以下かつ課税標準となる法人税額が2,000万円以下…9.7%

法人市町村民税の法人割も法人税や都道府県民税と同じく、会社設立時のほぼ全ての会社は②の低い税率が適用されます。

均等割(大阪市の場合)

法人市町村民税の均等割は都道府県民税と違い、資本金等の額以外に従業員数が加味されて、税額が決定されます。1市町村で50人を超えているか否かによって金額が異なります。

資本金等の額が1,000万円以下の場合
従業員数 50人以下… 50,000円
従業員数50人超… 120,000円

資本金等の額が1,000万円超1億円以下の場合
従業員数50人以下… 130,000円
従業員数50人超… 150,000円

資本金等の額が1億円超10億円以下の場合
従業員数 50人以下…160,000円
従業員数50人超…400,000円

資本金等の額が10億円超50億円以下の場合
従業員数50人以下 410,000円
従業員数50人超 1,750,000円

資本金等の額が50億円超の場合
従業員数50人以下 410,000円
従業員数50人超 3,000,000円

このように法人市町村民税は、道府県民税と同様に赤字の場合であっても、均等割が課せられるということを覚えておいた方がいいですね。

事業所税

事業所税は、大阪や東京などの大都市地域 における行政サービスと事業活動との受益関係から、大規模の事業所を持つ個人や法人に課される税金です。
事業税と名称が似ていますが、全く異なる税金ですので間違わないようにしましょう。
事業所税は免税点が高いため、多くの新設法人や小規模法人では課税されません。
新設法人や小規模法人で課税される可能性があるとすれば、大きな工場を持つ法人やスポーツクラブなどの大きな施設を運営する法人でしょう。
また、大阪、東京、博多、名古屋などの大都市は該当しますが、人口30万以上の大都市や政令指定都市以外の田舎地域ではそもそも課税されません。
大都市と政令指定都市でも総床面積1,000㎡以下かつ従業員数100名以下の法人では課税されないので、多くの新設法人や小規模法人は該当しません。

課税される場合、すなわち総床面積1,000㎡超又は従業員数100名超の大阪の場合の税率は
①1㎡につき600円
②従業者給与総額の0.25%
これら2つの合計により計算されます。

固定資産税及び償却資産税

固定資産税は、固定資産を所有した場合に課せられる税金です。
本社や工場などの土地・建物を所有していれば固定資産税が発生します。賃貸物件の場合は発生しません。なお、機械等の資産は固定資産税の一種で償却資産税という税金がかかりますが、合計150万円以下は免税になります。
○ 税率
固定資産税及び償却資産税…1.4%(市町村により1.5%の場合有)

まとめ

1年間の法人の税金についてご説明しました。
様々な税金があり、税金の種類により、それぞれの税率があるため全て完璧に把握することは困難です。
経営者は概算だけを理解すれば十分だと思います。
概算の税額は顧問税理士に聞くのが良いと思いますが、赤字の場合、基本的に道府県民税と市町村民税の均等割しかかかりません。
大阪市で大きな資産もなく資本金1千万未満で設立された場合は、府民税均等割20,000円 及び市民税50,000円の計70,000円発生すると理解されればよいと思います。
儲かれば、所得の20%~34%+消費税が発生すると考えておけば十分かと思います。
これらの税金を考慮した資金繰りを組み、経営を安定させましょう。