個人事業主とは違い、会社設立をすれば社長であっても会社から役員報酬を受け取ることになります。特に個人事業から法人成りする方にとっては少し戸惑う制度です。
今回は形式的な書類の残し方や実務上の役員報酬の最適な決定方法までを会社設立メインの税理士が解説します。
役員報酬の種類
役員報酬とは基本的に株主総会又は取締役会で決定されますが、下記の3種類のパターン以外の支払方法では経費になりません!
これは是非覚えておいて下さい。普通の従業員であれば、支払えば基本的に経費になりますが、役員報酬は決まった手順を踏まないと会社の経費として認められないのです。
定期同額給与
定期同額給与はその支給時期が1か月以下の一定の期間ごとである給与のことです。
通常、会社員の方が毎月会社から頂くお給料と似ています。
ただし、注意点があります。
まず、定期同額給与は毎月同じ金額で同じ日は渡さないとないといけません。「今月は儲かったから多めに貰おう」とか「毎月25日払いだけど、俺は社長だから前もって10日に取ろう」などということは基本的に認められていません。
さらに、役員報酬を決定する株主総会は決算後3カ月間以内に開かないといけないので基本的に年1回のため、前もって向こう1年分を決定する必要があります。
事前確定届出給与
事前確定届出給与とは所定の時期に確定した額の金銭等で支払うことです。
簡単に言えば、賞与みたいなものです。現に7月と12月に支払う会社が多いです。
ただし、やはり制約があります。
会社設立時は、設立の日以後2月以内、2年目以降は株主総会の日から1ヶ月以内又は決算期末から4ヶ月以内のいずれか早い日までに税務署に届出をする必要があるのです。
簡単に言えば、向こう1年で支払う金額、日時を決定し、先に税務署に届けた場合のみ経費として認められるのです。
日時は一日でもズレればいけませんし、金額は1円でも違えば経費にならないのです。
要するに儲かって法人税を払いたくないから賞与を社長にたくさん払おうということを禁止しています。
業績連動給与
業績連動給与は会社またはその会社と支配関係にある会社の業績に、役員の給与額を連動させる給与のことです。
業績に応じて給与が出せるので、「定期同額給与」や「事前確定届出給与」より使い勝手が良さそうですが、同族会社は対象外であり、有価証券報告書に記載する指標に基づき支給しなければならず、上場会社以外は実質的に不可能と方法となっています。
よって、新設法人のみならず中小企業は「定期同額給与」又は「事前確定届出給与」で役員報酬を支給することになります。
役員報酬の変更方法
役員報酬は基本的に1年間変えられないです。ただし、業績の急激な悪化などは例外的に変更することが出来ます。
役員報酬を変更する際は「リーマンショックで売上が半減した状態が3ヶ月以上続いている」、「主要取引先の倒産により、利益が急に出なくなり、社長や役員に報酬を支払っている余裕がない」など相当の理由が必要です。
これらのような緊急のことがあれば、臨時株主総会を開き、役員報酬を変更することが出来ます。
役員報酬の適正額
さて、役員報酬はいくらが適性でしょうか。役員報酬を高くして赤字にすれば、法人税が発生しない代わりに所得税が高くなり、銀行の評価も下がります。
逆に、役員報酬を低くすれば、所得税が下がる代わりに法人税が上がりますし、役員の生活も厳しくなります。
こられを踏まえて考えるべきですが、そもそも1年間の利益の予測は難しいですし、その他の要因もあります。
やはり専門家である税理士と相談して決めるのが一番良いです。
まとめ
今回は役員報酬についてまとめました。
役員報酬は経費になる要件が厳しいですし、適正価格は難しいものです。税理士に相談するのが良いでしょう。
当税理士事務所で役員報酬や会社設立のご質問がある方は「お問い合わせ」からご連絡下さい。