今回のテーマは会社設立時に提出しなければならない税務関係の届出書・申請書についてです。顧問税理士が既に決まっていらっしゃる方は税理士が代理で提出してくれると思いますが、決まっていらっしゃらない方は税理士を決める前に届出の提出期限が過ぎてしまった!とならないように、こちらのページを参照して下さい。提出をしなければ税金面で不利になったりペナルティーを受けることもあります。
会社の設立は登記手続きが完了すればそれで終わりではありません。税務署、都道府県、市町村、年金事務所、労働基準監督署、ハローワークに至るまで様々な届出書の提出が必要です。今回は税務署、都道府県、市町村へ提出すべき税務関係の届出についてご説明したいと思います。会社設立時に年金事務所、労働基準監督署、ハローワークに対する社会保険関係の届出書については「社長1人で会社設立!社会保険の加入義務とその手続き」を参考にして下さい。
税務署に提出すべき6つの届出
まずは会社設立時に税務署に提出すべき6つの届出について記載します。
提出先は全て本店所在地の管轄の税務署になります。
法人設立届出書
提出期限:法人設立の日以後2か月以内
添付書類:定款の写し、履歴事項全部証明書、設立時貸借対照表、株主名簿
法人を設立した時に法人を設立した旨を税務署に知らせるための届出書です。
この届出を提出しないと申告書や納付書が税務署から送られて来ない可能性があります。その前に税務署から届出がされていない旨の電話がかかってくるとは思いますが。
青色申告の承認申請書
提出期限:設立の日以後3月以内又は事業年度終了の日とのうちいずれか早い日の前日まで
添付書類:特になし
青色申告の承認申請書は、今回紹介する届出書・申請書の中で一番重要です。
何も提出しなければ白色申告で申告することになるのですが、青色申告の承認申請書を提出し青色申告で申告すると、下記のような特典を受けることができます。
○ 欠損金の9年間の繰り越し(平成30年4月1日以後に開始する事業年度以降は10年間)
○ 1年間の欠損金の繰戻還付
○ 特別償却や特別控除
○ 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
青色申告の承認申請書を提出すればこれらの特典を受けることができます。特に欠損金の9年間の繰り越しは重要です。
例えば、第1期に200万の赤字、第2期に100万円の黒字であったとします。
通常の白色申告ですと、第1期は赤字のため法人税0円、第2期は100万円に所定の税率が掛けて税金が発生します。
しかし、青色申告の承認申請書を提出し、青色申告をすれば第1期は赤字のため法人税0円、第2期は第1期の赤字200万円のうち100万円を第2期の所得に充当し、法人税が0円となります。さらに、欠損金は9年間繰り越せるため、第1期の赤字の残り100万円は残り8年間繰り越すことができます。
このように、青色申告を適用するのかしないのかで大幅に税額が変わりますので、提出漏れのないようにしましょう。
給与支払事務所等の開設届出書
提出期限:開設があった日から1ヶ月以内
添付書類:特になし
給与支払事務所等の開設届出書は、法人が役員や従業員に給料を支払うことになれば提出する届出書です。個人事業者で自分一人だけで事業を営む場合は提出の必要はありませんが、法人の場合、社長一人であっても、会社から社長へ報酬を支払う形態になります。よって、初めは従業員を雇わなかったとしても自分自身に少額でも報酬を支払うのであれば提出が必要な届出書です。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
提出期限:期限なし。提出した日の翌月に支払う給与等から適用される
添付書類:特になし
源泉所得税は基本的に徴収した日の翌月10日までに毎月納付しなければなりませんが、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書を提出すれば、半年に1回の納付で済みます。1月~6月までの給与などの源泉は7月10日まで、7月~12月までの給与などの源泉は翌年1月20日までとなります。
要件として、従業員数が常時10人未満の場合に適用できます。新設法人の場合はほとんどがこの要件に当てはまると思いますので、毎月納付するより、半年に1回の納付の方が手間を省くことができるので提出した方が楽です。
棚卸資産の評価方法の届出書
提出期限:設立第1期の確定申告書の提出期限まで
添付書類:特になし
棚卸資産の評価方法の届出書は、棚卸資産の評価方法について事前に税務署に通知するために提出します。棚卸資産の評価方法は何も提出しなければ、最終仕入原価法が適用されます。先入先出法や売価還元法など様々な棚卸資産の評価方法がありますが、どの方法が一番会社にとって良いのかはケースバイケースです。この届出書は提出する前に税理士に相談した方が良いです。
減価償却資産の償却方法の届出書
提出期限:設立第1期の確定申告書の提出期限まで
添付書類:特になし
減価償却資産の償却方法の届出書は、減価償却資産の償却方法を決定するための届出書です。個人事業者と違い法人は減価償却資産の償却方法の届出書を提出していなければ、定率法が適用されます。一般的には定率法の方が早期に多く償却でき有利なため、多くの会社は提出する必要はないですが、毎期同じ金額の償却ができる定額法に変更したい場合は提出が必要です。
都道府県及び市町村に対する届出書
法人設立等申告書
提出先:実質的な本店の所在地の都道府県
提出期限:法人設立の日以後2か月以内
添付書類:定款の写し、履歴事項全部証明書
いわゆる都道府県に対する法人設立届です。大阪府の場合、「法人設立等申告書」という名称ですが、この申告書は各都道府県によって若干名称の違いがあります。多くの都道府県ではホームページからダウンロードできますので、その都道府県の雛形のものを使用するようにして下さい。なお、一部の都道府県ではホームページからダウンロードできませんので、役所に取りに行くか、電話して郵送してもらうようにしましょう。
法人設立・事務所等開設申告書
提出先:実質的な本店の所在地の市町村
提出期限:法人設立の日以後2ヵ月以内
添付書類:定款の写し、履歴事項全部証明書
いわゆる市町村に対する法人設立届です。大阪市の場合、「法人設立・事務所等開設申告書」という名称ですが、都道府県に対する設立届と同様に市町村により名称の違いがあります。都道府県と同じく、市町村によりネットからダウンロードできない市町村もあります。
届出書・申請書提出の注意点
これらの届出書・申請書を提出する時に添付書類については1部で構いませんが、届出書は2部提出しましょう。1部には控印を押印し、2部提出します。すると税務署から受付印が押印され一部返却されますので、控を保管します。
初めに提出するこれらの書類は大切なため、会社を廃業するまで半永久的に保管しておいて下さい。なくされたからといってペナルティーはありませんが、自身が何の書類を提出していて、何の書類を提出していないか把握するのに役立ちますので、必ず控は作成し、保管しておいて下さい。
また、登記簿の本店所在地と実際の事務所が異なる会社の場合は下記に注意して下さい。
税務署関係→登記簿の本店所在地の場所の管轄の税務署へ提出
都道府県及び市町村→実質的な本店の所在地
税務署は登記上の本店所在地、都道府県及び市町村は実質的に営業を行っている本店所在地が管轄になりますので、登記上の本店所在地は社長の自宅にしたが、実際は他の場所を会社の事務所にしている方は提出先を間違わないように注意して下さい。
まとめ
上記の8つの届出書・申請書は法人を設立した場合に必要な税務書類です。
提出期限が早い届出書・申請書もありますので、忘れないように期限内に提出しましょう。
現在、税理士を検討中の場合、棚卸資産の評価方法の届出書と減価償却資産の償却方法の届出書を除いた上記6つの税務書類は最低限提出しておきましょう。
法人の場合は、いずれ顧問税理士が必要になりますので、大阪で新設法人に強い当事務所にご依頼頂ければ、全て無料で提出致します。質問だけの方もお気軽に「お問い合わせ」よりご質問下さい。