今回は、消費税のインボイス制度について、会社や個人事業主がすべきことや注意点など税理士がわかりやすく解説します。
インボイス制度とは
インボイスとは適格請求書のことをいい、売手が買手に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
インボイス制度が始まると、課税事業者に今までの請求書に、登録番号、適用税率及び消費税額の記載が義務付けられます。
インボイス制度の開始によって会社や個人事業主がすべきこと
インボイス制度が開始前、開始後に会社や個人事業主がすべきことは下記の通りです。
開始前…適格請求書発行事業者の登録申請書を提出期限(次のブロックに記載)までに管轄の税務署に届け出る
開始後…開始後の請求書は全て、従来の請求書の記載内容に加え、登録番号、適用税率及び消費税額の記載した請求書を発行すること
登録番号は適格請求書発行事業者の登録申請書を税務署に提出すれば、1ヶ月程度で通知書が発行され自社の登録番号がわかります。
適用税率及び消費税額は現在の請求書でも記載している会社がほとんどであると思われますが、インボイス制度が開始されると義務化されます。
特に飲食業など一般の税率10%と軽減税率8%が混在する会社はそれぞれの税率ごとに分けて記載する必要があります。
インボイス制度の開始時期
インボイス制度は令和5年10月1日より開始されます。
適格請求書発行事業者の登録申請書の提出期限は令和5年3月31日です。(やむを得ない事情がある場合は令和5年9月30日)
インボイス制度の影響
さて、上記の通り、インボイス制度が始まったからと言って、企業や個人事業主がすべきことはさほど多くありませんが、インボイス制度が始まってからの税額や取引先との関係など重大な影響があります。
まず、インボイス制度が始まると登録番号がない、すなわち免税事業者からの仕入れやサービスに対する仕入税額控除は認められません。(後に記載しますが猶予で一部のみ認められる期間があります)
さて、仕入税額控除というなじみのない言葉が出てきましたがこちらについてまず解説します。
消費税の計算は預かった消費税-支払った消費税で計算されます。
例えば
税抜売上1,000万であれば、企業は税込1,100万円を顧客から受け取ります。
10%の100万円は預かった消費税です。
この企業が仕入れや接待交際費、会社の家賃などで税抜700万支払ったとします。
会社は税込770万円を取引先に支払います。
10%の70万円は支払った消費税です。
この企業が納める消費税は100万-70万の30万円です。
これが消費税の計算方法であり、支払った消費税70万円を仕入税額控除といいます。
インボイス制度が始まると、登録番号がない事業者からの仕入れやサービスは仕入税額控除が認められません。ただし猶予があり、下記の通りとなります。
令和5年10月1日~令和8年9月末日…免税事業者からの仕入れにつき80%控除可能
令和8年10月1日~令和11年9月末日…免税事業者からの仕入れにつき50%控除可能
令和11年10月1日以降…全額控除不可
仮に上記の例で令和5年10月~令和6年9月の事業年度で税込770万円が全て免税事業者からの仕入れであれば、70万×80%の56万円の控除となり
納める消費税は100-56=44万円となります。
よって、課税事業者は免税事業者からの仕入れやサービスは不利になりますので、よく検討した方が良いでしょう。同様の商品やサービスであれば課税事業者から行った方が良いと言えます。
免税事業者の影響
さて、免税事業者はインボイス制度より何か届出書が必要であるとか請求書の書き方が変わるということはありません。
ただし、上記で説明した通り、免税事業者からの仕入れやサービスについては、課税事業者は控除が制限されます。
同様の製品やサービスであれば課税事業者から行った方が有利です。要は税金面で得意先を不利にしてしますのです。
このことは事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
免税事業者の対策
免税事業者は課税事業者選択届出書という届け出を提出し、課税事業者になることが出来ます。
課税事業者になれば、顧客が税金面で不利になることはないので、少なくともインボイス制度の開始の影響で取引がなくなったり、少なくなったりすることはありません。
その代わり、課税事業者で消費税を納める必要があります。
これは事業への影響を加味し、判断されると良いでしょう。
一般消費者が相手の商売であればさほど影響がありませんが、BtoBの事業、すなわち得意先が会社であれば課税事業者の選択は視野に入れておいた方が良いと言えます。
まとめ
今回は消費税のインボイス制度についてわかりやすく解説しました。
インボイス制度ですべきことは適格請求書発行事業者の登録申請書を提出及び請求書に登録番号、適用税率及び消費税額を付加すること。
インボイス制度が始まれば、免税事業者から行う仕入れやサービスはよく検討すること。
インボイス制度の影響は免税事業者にも関係すること、必要あれば課税事業者選択届出書を税務署に提出すること。
これらはよく覚えておき、安心して経営できるようにしましょう。